桃が食べたい
夏といえば桃だ。スイカではなく桃だ。少なくとも私の中ではそうなのだ。桃を数個しか食べずに夏を越してしまうと「ああ、もっと食べたかった」と一抹の悲しみや寂しささえ感じてしまう。家族に勧められてもスイカには見向きもしないのに。
各地に産地があるが、山梨の桃が好きだ。なんとなく。
久しぶりに母親が訪ねてきた。桃とバナナとお小遣いをもらった。母親とは一緒に暮らしていないし、連絡を取ることもそうないのだが、こうしてたまに訪ねてきてはあれやこれやと何かしらくれる。ソシャゲのログボみたいなものかもしれない。
さっそくひとつ平らげた。皮をむいてかじりつくと、口いっぱいに甘い果汁が広がる。手のひらや腕から果汁を滴らせながら味わった。まだふたつ残っているので明日明後日とひとつずつ食べる予定だ。幸福。
窓が全開だろうがカーテンが開いていようがパンイチでいることを恋人にたしなめられた。「外にいる時は結構警戒心強いのにうちに入るとだらしがないよね、君ね」
家の中でどう過ごそうと個人の自由な気がする。いたずらに公序良俗を乱している訳ではない。むしろ、他人の家の中を覗き見してくる奴の方がプライバシーの侵害なのではないか。
…と、まぁこの様に詭弁を弄してみたが、昼間っから仕事にも就かずにソファーにパンイチでふんぞり返って高校野球を見ながら酒をかっくらう女に自己の主張の正当性など与えられるはずはない。母が見たらきっと嘆くだろう。南無三。