遺書

このブログは私の遺書だ。みんな……遺書を残すものなんだろう?

いつかは夜は毎日お家にいて、小さな心配もかけないでいたい

貯金のために、夜の仕事で働いている。ママは優しいし、先輩方も非常によく気遣ってくれる。相変わらずクソ客も多いが、今のところ上手くやってると思う。

ただ、やはりそういう飲み屋だから、客にしつこく迫られたり勝手に触られることもある。慣れてるから苦ではないはずなのに、恋人に対して不誠実を働いた気がして夜明け前に帰ってきて泣いた。すごく嫌だったから、そのことを冗談っぽく恋人に話したら、軽くキレられた。

「俺が東京にいるからって、君が他の男に食べられちゃいました~って言ってきても我慢しろっていうの?」

怒りはもっともだと思う。私だって自分の恋人をいやらしい手に触らせたくない。でも、この発言は私の操を疑われているみたいで悲しかった。一緒に暮らすために手っ取り早く稼ぎたいなら夜の仕事しかないし、キャバ嬢にとっては触られるのもしつこく迫られるのも仕事のうちなのだ。私は客に勘違いをさせて、ボトルをいれさせて、とにかくありったけの金を搾り取らなきゃいけない。そうなると、顔も胸も尻も脚も唇も、全部ただの道具だ。「嫌だけど、汚れていくみたいで怖いけど、全部あんたのためなんだよ」って言うのは欺瞞かなぁ。

その後、話し合って彼は言葉を撤回してくれた。けれど、なんとなく仕事に行くのが嫌になった。店で働けば働くほど、恋人に嫌われそうでこわい。

仕事とはいえ、他人と不貞を働いたら私に価値はないんだろうか。彼へ気持ちを向けていても、無理やりそういうことをされたのだとしても、他の男に友達以上のことをされたら私は捨てられちゃうのかなぁ。

彼はどこまで許してくれるのだろう。私はとにかく稼がなきゃいけないのに。年末までに十万なんて貯められるのか。でもこれ以上離れ離れはもう嫌だ。

気がついたらデリヘルバイトのサイトを見ていた。本番なしなら体験入店だけやってみようかな、なんてぼんやり思いながら何とかサイトを閉じる。生理前だから思考がとにかくやばい。

五億円欲しいとか、石油王になりたいとかじゃなくて、ただ恋人と一緒に生活したいだけなのに。

恋人に嫌われない様に、こっそりと自分を切り売りする。自分をバラバラに刻んで、できるだけ高値で売りつける。こういう生き方しかできない人間を好きになった彼は可哀想だ。